人材のグローバル化

ちょっと頭に来る事があった。
本当に企業はグローバル化したいのか?グローバルな人材が欲しいのか?
企業がグローバル化していくためには、人材がグローバル化していかなければならない、という。
それはそうだろう。
企業が海外展開する上で、今、課題になっているのはグローバル化を推進する役割を担う人材が不足している事にあるからだ。そんな中、多くの企業が新卒入社の外国人採用枠を増やしたりしている。
外国人だけに限らず、“グローバル人材”のニーズはやはりあるようで、立命館アジア太平洋大学(APU)などは国際学生の就職率約95%を謳う。秋田の国際教養大学(AIU)も高就職率で有名、就職率100%の大学と多くのマスコミが紹介している。
それらの大学の学生に共通するのは、英語が話せる事は勿論、異文化の中でのコミュニケーション能力を身につけている事と言われる。
確かにこれらの能力は通常の日本語で授業をする大学ではなかなか身につける事が出来ないスキルであるし、これが企業にとって即戦力として魅力的に映るのは当然だ。
また、特に外国人留学生などは大学に入ってきた段階で、将来どんなことをしたいか非常に明確なビジョンを持っているとも聞かれる。
他方、日本の学生は通常、就職企業を探す時点でも自分が本当に何をしたいのか分からぬまま活動している人も多いのではないか。
比較すれば、確かに早い段階から将来図を描いている学生は面接でも優位に立てそうだ。
疑いなく、上記のようなスキルも持ち合わせている学生たちは、グローバル化を目指している企業が欲しがっている人材像と合致する。だからこそ、この高就職率なのだろう。
しかし、この高い数字の裏にも、まさにグローバル化を目指している企業が「グローバル人材」を拒絶している例があることも見逃せない。
面接で外国人の生徒が「私は○○年までに自分の国に戻って起業したい。その時までに、御社は私にどんなことを提供できるのか」と質問したという。
面接官はその企業の技術流出を懸念してその生徒を不採用とした。
こんなケースは珍しくないと言う。
冒頭の「頭にきた」話に戻る。
私の友人でまさに「グローバル人材」がいる。
彼は元々日本の企業でキャリアを積んだ後、海外留学をし、専門分野を極め、その経験と知識を基にプロフェッショナルとしてまさに世界をまたにかけ活躍している。
友人だから言うわけではないが、彼自身、本当に優秀で、それぞれ属した企業でも成果を出し、認められている。
且つ、日本企業も海外も見てきたということで、性格も仕事ぶりも大変バランスの取れた優れた人間だと思う。
その彼がグローバル化を図る某日本企業に転職するため面接に臨んだ。
そこで彼は、これまでのキャリアを通していかに貢献できるか、そして、その企業の事業を通して更なる自分の技術を磨き、その分野でのプロフェッショナルになりたい、というような旨を述べたそうだ。
しかし、内定はもらえなかった。
理由は「途中で辞めてしまいそうだから」。
また、「ここの企業でなければいけないという思いが感じられなかった」とも言われたという。
企業の面接を受けるのだから、その企業への思いを訴えるのは正しい。
むしろ最終的にはこの一点への情熱こそが面接官を動かすポイントにもなり得るだろう。
勿論、愛社精神はあった方がいい。
それが結果、仕事への姿勢に反映されるところもあるだろう。
しかし、特に外国人などのグローバル人材を採ろうとしている時に、ここにこだわりすぎると危険だ。
結果的に、そういったグローバル人材が外資に流れてしまう可能性が高い。
そもそも外国人留学生に「終身雇用」という概念は通用しない。
それに、企業は本当にこんな不透明な時代に、この先もずっとその人に仕事を与え続けられる保証はあるのか?
本当に優秀な人が、例えば5年間、企業に莫大な貢献を与え、去っていくのを許すか、それとも、そこまでの優秀さを求めなくとも、そこそこの貢献をしてくれる人が忠誠心や愛社精神を持って企業に終身雇用されることを良しとするのか―。
私は企業がグローバル化を本当に目指したいのならば、踏まなければいけない踏み絵はここにあると思う。