Wellbeing Index

先週、気になる記事を見つけました。
イギリスのキャメロン首相が“ Wellbeing Index ”なるものを導入する計画を発表したというのです。
日本語だと「幸福度指数」と訳すのだそう。
幸福度指数と言えば、フランスのサルコジ大統領も、去年からエキスパートの委員会を立ち上げ、GDPに代わる「国の豊かさ」を表すものとして、この指数の導入を提唱しています。そして、FRBのバーナンキ議長も幸福に資する経済発展を主張。こういった流れを見ると、サブプライム問題を境に、強欲的な資本主義に疲弊し、それを忌避した結果、利益至上主義・成長至上主義から、一気に精神主義というか平和主義に振り子が触れているように見えるのは私だけでしょうか。
そして、ここ日本でも、政府が幸福度に関する指標の開発を検討中である上に、菅総理の「最小不幸社会を作りたい」という発言もあり、他の先進国同様、世界の大きなトレンドに乗った動きを見せています。
幸福度というと、GNH(Gross National Happiness)=国民総幸福量の国、ブータンを想起する人も多いかと思います。
先日、日本経済新聞社と日本経済研究センターが主催した「GSR」のシンポジウムに参加し、元世界銀行副総裁の西水美恵子さんのブータンに関する講演を聴講したのですが、西水さんによると、ブータンの国民総幸福量は長年築いてきた「政治哲学」であって、決して「指標」なのではないのとのこと。
確かに何を以て「幸福」を図るのかという意味では、幸福度は簡単に数値化できるものではありません。幸福という概念は個々人によっても違うものであるし、国境を越えれば尚更、GDPのように世界統一の比較可能な指標とするのはやはり内容からして無理がありそうです。
西水さんは言います。ブータンでは、国の成長は国民の幸福を実現するための「手段」であるのだと。このような発想転換を先進国は、そして、日本は出来るのかどうか。
私は、我々が成長を二義的に捉え、幸福の追求を目指すべき指針に掲げることは恐らく難しいのではないかと思います。少なくとも、発想の転換を図れない私にとって、やはり国の成長は人々の暮らしを豊かにし、人々に夢や希望を与える一つの大事な手段でもあり、目標でもあると思うのです。
しかし、世界の大きなパラダイム変化の中でどの国よりも早く少子高齢化に向き合わなければならず、これまでの社会の仕組みやライフデザインの変更を余儀なくされる日本にとって、この幸福度指数導入の議論は「人間の幸福」の定義や、これからの日本のあるべき姿を考える良いきっかけになるかもしれません。