EXIT
先日、シンクロナイズドスイミング指導者の井村雅代氏が、再び中国のコーチに就任したというニュースが出ていましたね。背景は詳しく分かりませんが、記事によると、井村氏には5カ国からもコーチ職でオファーがきていた一方で、日本は「下支え」という役割しか求めなかったよう。
そもそもこのニュースの背景をよく知らないのですが、記事を読んでの感想は「またか」の一言です。このニュースがコントラヴァーシャルなテーマだということを十分承知の上で思った事を書かせて頂くと、井村氏としては自分を一番正当に評価してくれる所に出て行ったということではないでしょうか。何を以て正当評価というかはまた議論の余地がありそうですが、当然、報酬などの待遇もさることながら、何よりもその人が自身の実力を最大限に引き出せる環境・ポジションを提供できるかどうかが一番大切なような気がします。そう考えると、能力のある人間を正当に評価するシステムがないというのは組織にとって致命的です。大切な「人財」や「能力」「技術」を外部に流出させてしまう事につながりかねません。
友人との会話の中でもよく出てくる理論で、ハーシュマンの「Exit-Voice」というものがありますが、まさに、今回のこのニュースは対応として「Exit(離脱)」を選んでしまった一例でしょう。今といわず恐らく昔からあったであろう能力のある人間が結果としてVOICE(抗議)するよりもEXIT(退出)を選んでしまうというこの現実。優秀な人材が流出してしまった原因は自分たち(=組織)にあったという「気付き」こそ、彼らの無言のVOICEを受け取った証左です。そこからどう変わっていくのかが大切です。